Ⅰ
Aさんのお宅に訪問しました。
4世代同居のご家族には、幼稚園と小学生のお子さんがおられます。
歩くことのできない曾おばあさんの布団のそばで、今日は宿題中です。
いつも、曾おばあさんのそばで宿題をしたりおやつを食べたりしています。
訪問すると、「こんにちは」と2人が笑顔を向けてくれます。
お母さんが「今から看護師さんがおばあちゃんを看てくれるから、さぁ、どいてどいて」と。
「かまん、かまん、部屋でおったらええよ」いつものようにケアを始めます。
便が出ていましたので、看護師は子供さんたちの様子を気にして見てみますが、いつものように二人は何事もないかのように宿題を続けています。
気づかないふりをしている子供たちに感心しながら、Aさんの気持ちを察して看護師はできるだけ素早くきれいにケアをします。
子どもたちは学校に行く時や帰った時、必ず曾おばあさんの傍にきて顔を覗き込み、頭や手をなで「おはよう!」「ただいま!」と声をかけます。
ひいおばあさんは嬉しそうに「いっといで」「おかえり」と精一杯声を出して笑顔で送り迎えます。
一緒に暮らす、大切なおばあちゃんです。
Ⅱ
今日は ひいおばあちゃんの布団の上でおやつタイムです。
二人は楽しそうにはしゃぎながら、おやつを袋からだしています。曾おばあちゃんもニコニコ見守ります。
小学生のお姉ちゃんが、おばあちゃんの口に『ぽん』とお菓子を入れました。ひ孫からのお菓子を口から出すわけにいきません。子供たちは、おばあちゃんの食事がすすまないことを知っているんです。それで、誰に頼まれたわけでもないけどそんな風にしているのです。 思いやりの心がはぐくまれていて周りも幸せな気持ちになります。
二人はいつもニコニコ優しいまなざしの、おばあちゃんが大好きです。
Ⅲ
立ち上がりが難しいBさんのお宅に訪問しました。
ある時立ち上がろうとするBさんに、小学生のお孫さんがすぐに絶妙な場所に片手を添えました。するとうまく立ち上がれています。
介護を習ったわけではないけれど、一緒に暮らすお孫さんには当たり前に身についているんですね。
Bさんへのベストな支援でした。
Cさんは寝たきりです。自分では電動ベッドで寝返ることもできません。おしっこの管も入っています。
今日は孫さんの友達も遊びに来て、時々Aさんの部屋にも駆け込みます。でも、「臭い」「いやだ」と、ケラケラ笑って部屋から出ていってしまいました。
うーん(でも、こんなことは多いんです)。
子供たちは来訪者に興味があります。
「 ぼく、〇〇いうんで~ 」
看護師は話をして仲良くなり、子供たちをそばに呼びます。
ちょっとおばあちゃんの手を支えてくれる?
「ええけど、お金くれるのー 」
う~ん、それはないけど、してくれると助かるのよ~
でも、まかされると頑張ります。
上手にもってくれてるねー、助かるわー
声掛けがご褒美です。ますます頑張ります!
おばあちゃんはいつから寝てるの?
「さぁ、もうだいぶや」
〇〇君がこんなにベッドにいるとしたらどう?
「いやー、いやや、絶対いやや」
辛いかな?
すぐに深く頷いて答えます。
「おばあちゃんも 辛いんやね」と看護師が言うと、
あ!という表情。
そのあとは、Cさんを思いやった顔で見ています。
以前のおばあさんに対する態度とは違っています。
おばあちゃんをよろしくね。今度看護師さんが来るまで、任せるね。
間髪入れず手を揚げ、「まかして!」と。
自分がお手伝をしていると大切に思う気持ちも増すようです。
子供たちは、最初の様子が嘘のように、おばあちゃんの顔を覗きこみ、髪を手でなでながら「痛いとこないな?」と聞いています。
時々手を握ったりさすったりしています。
表情も乏しいCさんですが、嬉しそうにされているのがわかります。
おばあちゃんがいてくれることで、思いやる心の温かさを沢山経験できています。
(看護師は、子供たちがそばにきやすいよう配慮します。)